a gallery 第5室

   
 いよいよこのあたりから画風ががらっと変わってきだします。といっても 赤を基調としている事には変わりありません。 では何が変わったかというと「形」です。 「見えるものを描く」という作業から「見えないものを描く」という作業に 変わっていったんです。

 第3室の波や風もややこれに近いのですが、一番の違いは「抽象画」を 意識した事です。 それまでも「抽象を書きたい」とは思っていたのですが、 どうも難しそうに思えて踏み切れませんでした。 けれどちょうどこの頃、ボクを抽象の世界へと走らせる3つの出来事が 重なったんです。

 ひとつは95年末に「阿波の里」で行われた松谷さんのワークショップです。 松谷さんは60年代の抽象画全盛時代に出てきた画家で、その頃の話を スライドをまじえて2時間近く話してくれました。 その中で印象に残ったのが、「人のやらない事をやれ」という60年代の合い言葉と、 「具象の絵もある一部だけ見れは抽象画になる。具象絵画と抽象絵画は 全く別のものの様に思われがちだが、実は同じ」といった言葉でした。

 もう一つは、仁宇先生とカルトン画を描いた事です。 で、2時間ほどカルトン画というものをいっしょに描いたのですが、 その楽しかった事楽しかった事。筆の赴くまま気持ちの赴くままに描く事が どんなに楽しいか、この時初めて知りました。 それから、抽象・半具象の世界に染まっていったんです。

 3つ目はバジャー展です。 バジャー展とは、徳島県の若手造形作家グループの展覧会の事で、 この時第5回展を2ヶ月後に迎えようとしていました。 そしてボクはこのバジャー展を実験の場として初めて描いた抽象画を出展してみました。 結果は上々、グループのみんなから絶賛に近い評価を受け、 以後気を良くして描いています。

 俳句をタイトルに使ったのもこの時からでした。 というより俳句からイメージして絵を描くという手法をとったんです。 なぜ俳句かといえば、ボクの作る俳句にはやや難解なものが多く、 抽象画に合うんじゃないかと思ったからです。 それに、これなら世界中の誰もやったことがない。 俳画というのは昔からあるけれど、油絵と俳句を合体させるのはボクだけだと思ったからです。 しかも、抽象的な絵と難解な俳句が混ざり合って見る側に素直に溶け込んでいくというんです。 これは意外な発見でした。

 抽象画と現代俳句、この二つをドッキングさせたボクにしか作れない世界。 しばらくはこの独自の世界を追求していってみようと思っています。
   


油絵サンプル
油絵サンプル
凶悪な事件が多発熱帯魚       原爆忌マークシートを塗りつぶす


油絵サンプル
油絵サンプル
月天心脳波に少し異常あり       活発に動く右脳朔の月


油絵サンプル
油絵サンプル
夏の果魔法の呪文言ってみる       信号の黄色から赤風死せり


油絵サンプル
油絵サンプル
歴史とは惨いものなり赤い薔薇       秋澄みてデジタルカメラ買いに行く



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