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村上哲史のアトリエ探訪

Studio.6 写真家脇林 清さんのスタジオ 2−2
場所-------------(香川県庵治町大島 国立病院機構「大島青松園」)

パソコンを操作する若林さん

 とりあえず食事を済ませたあと、作品を見せて頂きました。脇林さんは、撮影はデジタルカメラで行ないます。それをパソコンに取り込み、プリンターで印刷しているのですが、その数が半端ではない。分厚いA4サイズのクリアーファイルがわんさか出てきます。当然すべてを見せて頂くことは時間の都合不可能なので、その中の数冊を選んで見せて頂くことにしました。

若林さん肖像 脇林さんは、5年前ふとしたきっかけでデジタルカメラを手にしファインダーを覗いてみたところ、肉眼で見る世界とは全く違う世界が見えたと言います。
「それまでは義足を作ったりしていたけれど、一切やめて写真にのめり込みました。カメラの技術書とか写真の解説書とかも買って読んでは見たけれど、どれも私の感覚にしっくり来ない。だからすべて自己流で、私が美しいと思ったものや撮りたいと思ったものだけを撮るようにしています。素人が好きでやってるものだから、プロのあなた達に見てもらえるようなものかどうか・・・」
 いえいえ、それこそ写真の原点だと思います。上手に撮ってやろうと技術に走りがちな人が多い中で、「撮りたいものだけを撮る」のはなかなか難しいもの。同じ写真家である幸田さんも手放しで大拍手。この言葉を聞けただけでも来た甲斐があったというものです。
 また脇林さんはこんなことも言っていました。
「私がレンズを向けると、動物でも植物でも『撮ってくれ』と言わんばかりに勝手にポーズをとるんです。私はただシャッターを押すだけ。逆に撮られたくないときは、プイッとよそを向いたり、こちらに突っかかってきたりします。そういうときは、大人しく引き下がるんです」
 まさに、本物の目を持ったカメラマンに出会った気がしました。
 

若林さんへ質問。中央に村上、右に井浦 脇林さんはプリンターを2つ持っています。エプソンの最新式顔料プリンター。これがまた発色がキレイんです。写真屋さんでプリントしたものと見間違えるような作品がびっしりとファイルに詰まっています。そしてもう一台も同じ機種。
「壊れたときのために2つ持ってるんです。修理に出しても代替なんか貸してくれないじゃないですか。とにかく撮影したものをすぐにプリントして見てみたいんです。パソコンの画面で見るのと印刷したのでは色が違いますから。また、カメラのメーカーによっても微妙に色が違いますね」
 とにかく紙への出力にこだわる脇林さん。あまりにプリンターを使いすぎて2ヶ月で使い潰してしまったことがあるとか。棚の上にはインクと専用用紙が積まれていました。
 また、最近になってフォトショップでの画像の加工も始めたとか。
「こんな便利なものがあるとは知らなかった。雨の日などは昔の写真をこれで修正したりした遊んでますよ」
 子供のように無邪気で楽しそうに語ってくれる顔がとても印象的でした。

傘を差し撮影に向かう
 また小雨が降り出したようでしたが、外に出てみることにしました。晴れた日は毎日のようにカメラを持って島内を回っている脇林さん。この島の総てを知り尽くしている彼の道案内で、島の端まで行くことにしました。
 その途中でもたくさんのお話を聞かせてくれました。強風の時に木に登ってカメラを落としてしまったお話や、潮が引いて隣の島まで歩いていって、あまりにお天気がよくて気持ちよくて眠ってしまったら潮が満ちてしまって帰れなくなったとか。食事の時間に遅れるのも日常茶飯事で職員にも呆れられているとか。しかも彼は70才をゆうに超えているんです。元気というかタフというか、人生を謳歌しているという感じがします。

被写体にカメラを向ける脇林さん 脇林さんが写真を撮るときの格好です。三脚を付けたままのカメラをお腹と左腕で固定し、右手でシャッターを押します。要するにカメラを体全体で固定するわけですからぶれる心配はありません。
 ボクの友達にも同じようにカメラを特製の一脚に取り付け、一脚の部分を握りしめて体に押し当てて撮影を楽しんでいる者がいます。また、目が見えなくても写真を楽しんでいる方もいるようです。
 常識といわれるもので考えると「えっ、どうしてそんなことが出来るの?」と思うことでも、「やりたい」という強い気持ちと少しの工夫があれば、案外なんでも簡単にできてしまうものなのです。常識といわれるものがいかに当てにならないものか、またひとつ思い知らされました。


ファインダーを覗く脇林さん
 また、
「レンズを通して社会を見ると、今まで見えていなかったことが見えたりします。いろんな方向から物事を切り取ることが出来るようになるからでしょうか。そういう意味でも今の子供たちにカメラを持って欲しい」とも言ってましたし、「初心者ほど良いカメラを持つべき」とも言っていました。


 松の木の切り株です。樹齢何百年でしょうか。園内ではこういう切り株をあちらこちらで見かけます。
「昔はもっともっと松がたくさんあったんだけど、施設の増築とか改築にじゃまだ言うことで切られていきました。墓標の松も幾つか切られたようですよ」
 墓標の松とは、源平合戦の折、壇ノ浦で破れた平家の落ち武者がその松の根元で眠っているという曰く付きの松です。実際に鎧や骸が出てきたのかも。
 松だけではありません。海も砂浜も汚くなったと言います。
゜「沖縄の海が綺麗とかオーストラリアが綺麗とか言うけれど、昔のここはもっときれかった。水島にコンビナートが出来て重油が流れ出したり、赤潮が出たりしてどんどん汚くなって・・・」
 とはいうものの、ボク等が見る限りでは十分すぎるほど美しい自然に溢れています。一体昔はどれほど美しかったのでしょうか。昔の人がうらやましくも思います。


モニュメント「風の舞」の前で。前に村上。後ろ左から井浦、脇林、幸田。

 最後に、モニュメント「風の舞」の前で記念撮影。ということは島の端まで歩いてきたことになります。途中、雨が少し強くなってポンチョをかぶりましたが、ここまで来ると上がりました。
 その後、今来た道をそのまま戻り、別れを惜しみながら連絡船に乗りました。
 今回、取材時間はわずか数時間でしたが、その間に「名言」がいっぱい飛び出しました。人生の総てを知り尽くし達観している一面、カメラを持つと子供のようにどこまでも撮りたいものを追いかけるという脇林さんだからこそ出てきた言葉が山のようにありました。
 だから、その一言一言をすべてお伝えしたかったのですが記憶には限界があります。前日にボイスレコーダーを落として壊してしまったのが残念でなりません。でもとても良い取材が出来ました。今度はスローアートの仲間と共にぜひ遊びに行きたいと思います。



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